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2015年12月21日の新作昔話

鬼の嫁さん

鬼の嫁さん

 むかしむかし、ある山に、鬼が一人で暮らしていました。
「いつも、いつも、一人は寂しいな」
 いくら鬼といっても、やっぱり一人ぼっちは寂しいので、鬼は嫁さんをもらおうと考えました。
 そこで鬼は、ぐーんと大きく背伸びをして、村を見渡しました。
 すると、かわいい娘が見えたのです。
 その娘は、ほっぺたがぷっくらふくらんでいて、笑うと小さなえくぼができる、山本権兵衛(やまもとごんべえ)さんの娘の、おふくです。
 鬼はさっそく、権兵衛さんの所へ出かけて行って、
「おふくを嫁にくれ」
と、頼みました。
 しかし、突然鬼に娘をくれと言われて、権兵衛さんはびっくりです。
 大切な娘を鬼にやるなんて、もちろん嫌ですが、相手は鬼なので、断ったら、きっと暴れて村をめちゃめちゃにしてしまうでしょう。
 それで権兵衛さんは奥さんと相談して、鬼に言いました。
「おふくを嫁にやるには、条件がある」
「条件とは?」
「村は日照り続きで困っとる。村に雨を降らしてくれたら、おふくを嫁にやろう」
「なんだ、簡単な事だな。雨を降らせばいいんだな」
 鬼は大声でそう言うと、天にむかって吠えました。
「うぉー! うぉー! 蜘の鬼よ! この村に雨を降らせてくれ!」
 するとそのとたん、ザーザーと大雨が降って来て、からからに乾いていた畑は、たちまち生き返りました。
 こうなっては約束通り、おふくを鬼の嫁さんにするしかありません。
 やがて、おふくが鬼に嫁入りをする日が来ました。
 お母さんは、おふくに、
「この種をまきながら、山へお行き」
と、言って、菜の花の種を着物のたもとに入れました。
 おふくは泣きながら、菜の花の種を少しずつまき、鬼と山へ登って行きました。
 一方、鬼はうれしくてたまりません。
 おふくのためにごちそうを、毎日たくさんとって来ました。
 けれどもそれは、鬼にとってはごちそうでも、おふくにはとても食べられない、ネズミや死んだ鳥なのです。
 鬼は、おふくが眠れるようにと、子守り歌を歌いました。
 でもそれは、おふくにとって嵐の夜のかみなりのように聞こえて、眠るどころか怖くてたまりません。
 おふくは、毎日毎日泣いてばかりいました。

 さて、この山にも春が来ました。
「・・・あっ」
 おふくは、外を見て声をあげました。
 嫁入りの日、山へ来る道にまいてきた種が育って菜の花が咲き、黄色い花の道が出来ていたのです。
「あの菜の花をたどっていけば、村へ帰れるんだわ」
 そう思ったおふくは、菜の花が咲く道を通って、村へ向かいました。
「あっ、おふく、どこへ行く! 待て! おれの嫁さん、待て!」
 気がついた鬼が、すごい勢いで追いかけて来ます。
 おふくは途中、何度も転びながら、やっとなつかしい家に駆け込みました。
「おふく、よく帰ってきた」
「おふく、もう安心だよ」
 お父さんとお母さんは、おふくを抱きしめました。
 その時、どすんどすんと音がして、家が壊れそうなほどの大声で鬼がどなりました。
「おれの嫁さんを返せ!」
 すると、お父さんとお母さんは、台所から炒り豆の入ったなべを抱えて飛び出すと、
「お前に返すのは、これだ!」
と、鬼に向かって、炒り豆を投げました。
「いたた、いたた、こりゃたまらん!」
 鬼は苦手な炒り豆が体に当たると、頭をかかえて山へ逃げて行きました。
 それからは、鬼がやって来ることはありませんでした。
 でも、今でも時々山の方から、
「おふくに会いたい、おふくに会いたい。だが、豆は怖い」
と、鬼の泣く声が風に乗って山から聞こえて来るのだそうです。

おしまい

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