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山姥

山姥(やまんば)
中国の昔話中国の情報

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朗読 : ぬけさくのいちねん草紙

 むかしむかし、中国の山奥に、どんな物にでも姿を変える事が出来る山姥(やまんば)が住んでいました。
 そしてその山奥の近くの村に、ブタを育てて暮らしているおじいさんとおばあさんがいました。

 ある日の事、山姥はブタ小屋のそばを通りかかって、丸々と太ったブタを見つけました。
 山姥は大きな口からよだれをたらしながら、血のようにまっ赤な目でブタを見つめました。
「うまそうなブタだ。食いたいな」
 でもブタ小屋はとても丈夫に作ってあり、簡単には中に入れません。
「何かいい方法はないだろうか? ・・・そうだ」
 名案を思いついた山姥は、ブタ小屋の近くにつんであるほし草の山に火をつけました。
 すると火は、たちまちブタ小屋に燃え移りました。
 パチパチパチ。
 うら山の畑にいたおじいさんとおばあさんは、ブタ小屋の火事に気付いてびっくりです。
「大変だ! ブタ小屋が火事だ!」
 二人はあわてて飛んで帰ると、夢中で火を消しました。
 おかげでブタは無事でしたが、でもブタ小屋の半分が燃えてしまったのです。
「このままでは、トラやオオカミにブタを食べられてしまうな。・・・仕方がない、今夜は二人で見張りだ」
 そこでその日の夜は、おじいさんとおばあさんがブタ小屋の見張りをしました。
「あしたは大工さんに頼んで、ブタ小屋を直してもらわんとな」
「ええっ、毎晩ブタ小屋の番をするわけにはいきませんからね」
 この話を、山姥が聞いていました。
(なるほど、大工に頼むつもりだな)

 次の朝、山姥は男の姿をして、おじいさんの家にやって来ました。
「やあ、おれは腕の良い大工だよ。よかったら、ブタ小屋をただで直してやろう」
 でもおじいさんは大工を一目見て、正体を見破りました。
「年寄りなのに、ひげもない。おまけにその声。お前は山姥だろう!」
「ちっ!」
 山姥は山へ逃げると、松葉をひげのようにあごにはり付けました。
 そして炭の粉を食べて、声もガラガラ声にしました。
「ゴホン、ゴホン。これで大丈夫だろう。だがじいさんは怖いから、ばあさんをだましてやれ」
 山姥がおばあさんを探すと、おばあさんは家のそばの谷川でせんたくをしていました。
 山姥は山で取ってきた山ブドウを、おばあさんに差し出しました。
「おばあさん。あまいブドウだよ。一つどうだい」
「おやまあ。すまないね」
「おばあさん、おれは男だよ。立派なあごひげもあるし、声もガラガラだろう。それにおれは腕のいい大工だから、ブタ小屋を直してあげよう。もちろん、お金なんていらないよ」
「へえー。そりゃ、ありがたいねえ」
 おばあさんは喜んで、山姥を家に連れて行きました。
「おじいさんや。この大工さんが、ただでブタ小屋を直してくれるんだと」
 しかしおじいさんは、大工をじろりと見て言いました。
「お前さんのひげは、どうしてそんなに青いんだね?」
「それは、その。・・・じ、じつは、ゆうべ酔っ払ってね。着物を青く染める染物おけに、あごひげを突っ込んだんだ」
「ふーん、そうかい。しかし仕事をしてくれるというのに、どうして金を取らないんだ?」
「それは、その。・・・お、おれは、もともと気のいい男でね。人を助けるのが大好きなのさ」
「ふーん、そうかい。しかし・・・」
 するとおばあさんが、おじいさんに言いました。
「これ、おじいさんや。こんな親切な大工さんに文句をつけては、失礼ですよ」
「まあ、それはそうだが」
 おじいさんはあやしく思いながらも、大工にブタ小屋の修理を頼みました。
 山姥の大工は釘やのこぎりを使って、意外にもブタ小屋をきれいに直しました。
「ほれ、出来ました。これならトラだろうが山姥だろうが、ブタを盗む事は出来ませんよ。では、わたしはこれで」
 山姥の大工が行ってしまうと、おばあさんは喜んで言いました。
「おじいさん。これでねむいのをがまんして、見張りをしなくてもすみますね」
「そうだな」

 ところが次の朝、おじいさんがブタ小屋に行ってみると、ブタが一匹少なくなっているのです。
 おじいさんとおばあさんはブタ小屋を調べましたが、別に変わったところはありません。
「おかしいな?」
「おかしいわね?」
 しかしその日から毎晩、ブタが一匹ずついなくなりました。
「これはきっと、あの大工の仕業にちがいない」

  ある晩の事、おじいさんが戸のすきまからブタ小屋をのぞいていると、この間の大工らしい人影がブタをかかえてブタ小屋から出て来ました。
 そして人影はブタをかかえたまま、山の中へ逃げて行きました。
「ばあさんや。ブタを盗むのは、あの大工だぞ!」
 それを聞いたおばあさんは、涙を流してくやしがりました。
「きぃーっ、くやしい」

 次の朝、二人がブタ小屋を調べてみると、ブタ小屋の壁には秘密の隠し扉が作ってありました。
 山姥は、ここから出入りしていたのです。

 その日の夜、おじいさんとおばあさんは鉄のくま手を持って、隠し扉のそばに隠れました。
 そして山姥が来るのを、じっと待っていました。
 真夜中になると大工の姿をした山姥が、そーっとブタ小屋に近づいて来ました。
 そして隠し扉を開いて中に入ろうとしたとたん、待ち構えていたおじいさんとおばあさんが、
「えいっ! この山姥め!」
「やっ! よくもだましたね!」
と、鉄のくま手を山姥に振り下ろしました。
「ぎゃーっ! 助けておくれー!」
 さんざんなぐられた山姥は泣きながら逃げ出して、それからは決して人前に姿を現さなかったということです。

おしまい

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