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おしゃべりな王さま

おしゃべりな王さま
インドの昔話インドの情報

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朗読者 : 花水木 運営ブログ : 朗読の翼  運営サイト : すまいるカフェ

 むかしむかし、インドに、とてもおしゃべりな王さまがいました。
 王さまは朝から晩までおしゃべりばかりしていて、王さまの仕事を何もしません。
 こまった家来たちは、いつも思っていました。
「なにか、王さまにおしゃべりをやめてもらう方法はないだろうか?」

 そのころヒマラヤの山奥の池に、一匹のカメが住んでいました。
 そこへ二羽の白鳥が飛んできて、カメと友だちになりました。
「カメさん、わたしたちの家へ遊びに来ませんか? わたしたちの家は金色のほら穴で、とてもすてきなところですよ」
「わあ、それは行きたいなあ。・・・でも、ぼくは空を飛ぶ事が出来ないし」
「大丈夫よ。わたしたちが、連れて行ってあげるから」
「ありがとう。それでは、ぜひ連れて行って」
 そこで二羽の白鳥は一本の棒きれを探してくると、カメに言いました。
「さあ、この棒きれをしっかりくわえていてください。どんな事があっても、けっして口を開いてはいけませんよ」
「わかった。ぜったいに口を開かないよ」
 かめが棒きれをくわえると、二羽の白鳥はその両端をくわえて空へと飛びたちました。

(わあ、なんて気持ちがいいんだ)
 カメは風をきって、ぐんぐん空をのぼっていきます。
 ふと下を見ると、人間の子どもたちが遊んでいました。
 子どもたちは空を飛んでいるカメを見つけると、口々に言いました。
「あっ、白鳥が、カメを下げて飛んでいるよ!」
「本当だ! カメのくせに、なまいきだ!」
「カメなんて、地面をはっていればいいんだ」
 それを聞いて、カメは腹を立てました。
 そして白鳥との約束をわすれて、思わず口を開いたのです。
「うるさいやい! ・・・あっ」
 そのとたん、くわえていた棒きれから体がはなれたカメは、葉っぱのようにくるくるとまいながら下へ落ちていきました。
 ドッシーーン!
 カメの落ちたところは、ちょうど王さまのお城の庭でした。
「なんだ! カメが空から落ちてきたぞ!」
「かわいそうに、こうらが割れて死んでしまった」
 お城は、大変なさわぎとなりました。
 王さまもそのさわぎを聞いて、庭へ出てきました。
「しかし、どうしてカメが空から落ちてきたのだ?」
 王さまがたずねると、カメが落ちてきた理由を知っていたえらいお坊さんが答えました。
「いいですか、王さま。
 このカメは、口をきいてはいけない時におしゃべりをしたから、こんな事になったのです。
 これは、人間でもおなじ事。
 やたらとおしゃべりする人は、みんなこのカメのようになってしまいます」
「・・・・・・」

 それからというもの、王さまはよけいなおしゃべりをしなくなったそうです。

おしまい

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