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シカになった猟師

シカになった猟師
ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報

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 むかしむかし、アクタイオンという名前の若い猟師がいました。
 ある夏の日のことです。
 アクタイオンは十匹のイヌを連れて、森へシカ狩りに出かけました。
 森の道を十匹のイヌたちは、シカをおってかけて行きます。
 アクタイオンはイヌたちのあとについて、ほら穴の見える方へ走って行きました。
 草をかきわけ、カーテンのような木のつるをよけて進んで行くと、ほら穴のむこうに泉が見えました。
 泉から、何やら楽しそうな笑い声が聞こえて来ます。
 アクタイオンは、木のかげからそっと様子を見て思わず、
「あっ!」
と、声を出してしまいました。
 泉にいたのは美しい娘の姿の妖精(ようせい)で、月と狩りの女神のアルテミスのお供たちだったのです。
 妖精たちは、アルテミスと水浴びを楽しんでいるところでした。
 アクタイオンに気づいた妖精たちは、あわててアルテミスをかくしました。
 そしてアルテミスは、アクタイオンをにらむと、
「無礼者(ぶれいもの)!」
と、さけびました。
 そのとたん、アクタイオンのひたいからツノが生えました。
 アクタイオンは、体中がメリメリと音をたてて変っていくことにおどろき、あわてて泉に姿をうつしました。
「ああ、なんということだ・・・」
 アクタイオンは、なんとシカになっていたのです。
「どうしよう! ぼくはシカになってしまった! どうしたら人間に戻れるのだろう!」
 シカになったアクタイオンはさけびながら、森の中をかけまわりました。
 そのときです。
 ワンワンワンワン!
 アクタイオンのイヌたちが、シカになったアクタイオンを見つけて、目を光らせながら走って来るではありませんか。
「わあ、まて! 俺だ! お前たちの主人だ!」
 アクタイオンは怒鳴りましたが、イヌたちにはシカの鳴き声にしか聞こえません。
 そしてイヌたちは、主人のアクタイオンにかみつき、ついにはアクタイオンを殺してしまったのです。
 冬の星座の小イヌ座は、このときのアクタイオンの猟犬の中の一匹の、メランボスというスパルタ犬であると言われています。

おしまい

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