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魚石

魚石
長崎県の民話長崎県情報

♪音声配信
☆横島小次郎☆

 むかしむかし、長崎の唐人屋敷(とうじんやしき→江戸時代、長崎に作られた中国人村)に近い篭町(かごまち)に、伊勢屋(いせや)という欲張りな主人がいました。

 ある日、唐人屋敷のアチャさんが中国へ帰る事になり、お世話になった伊勢屋の主人へあいさつに行ったのですが、その時、アチャさんは伊勢屋の土蔵の石垣の中から青く光る石を見つけたのです。
「!!! これは・・・」
 青く光る石をしばらく見つめいたアチャさんは、伊勢屋の主人に青く光る石を売ってくれるように頼みました。
 すると伊勢屋の主人は、アチャさんに気軽に言いました。
「へえ、こんな石が欲しいのですか?
 別にお金なんか出さなくても、ただであげますよ。
 ちょうど来週、石垣の建て替えをしますから、その時まで待ってくださいね」
「いいえ。
 わたし、今日の船で中国へ帰ります。
 石垣を建て替えるお金、わたし全部出しますから、はやく下さい」
 そのアチャさんのあせり方を見た主人は、ふと思いました。
(もしかしたら、中国では大変値打ちのある石に違いない)
 そこで主人は、いかにも思い出したように言いました。
「ああ、すみません。
 その石はある長者に、百両でお譲りする約束をしていました」
「わかった。では、わたし二百両出すよ」
「二百両ですか。
 ああそうそう、長者は他にも、オランダから入ってきたシャボンという物もつけると」
「わかった。三百両出すよ」
「それから長者は、カステラという物もつけると」
「わかった。四百両出すよ」
「さらに長者は・・・」
「わかった。
 わたし、五百両出すね。
 でも今は、そんな大金持ってないから、一度中国へ帰り、次に長崎に来た時に持って来るね」
 アチャさんは主人にそう言って、中国へ帰って行きました。

 それを見送った主人は、石垣の青い石を見ながら大喜びです。
「やった、やった!
 こんな石ころが、五百両になるなんて。
 ・・・いや、待てよ。
 もしかするとこれは、五百両以上の価値があるのかもしれない。
 それなら、五百両で売るのはもったいないな。
 よし、これを取り出して、目利きの人に見てもらおう。
 五百両以上の価値なら、もっと値をつり上げてやるか」
 そこで主人は職人を呼んで、石を取り出しました。
 取り出した青い石をよく見ると、何か水のような物が入っています。
「これは、何だろう?」
 主人は太陽の光に透かして中を見ようとしましたが、その時、うっかり手を滑らせて青い石を落としてしまいました。
 落ちた青い石は二つに割れて、中から水と一緒に生きた金魚が飛び出します。
「しまった。五百両の石を壊してしまった!」

 翌年、再び長崎にやって来たアチャさんは、すぐに伊勢屋へやって来ました。
「五百両、持って来たね。
 石垣を建て替えるお金も、わたし出すね。
 だからあの石を、早く下さい」
「それが・・・」
 困った主人は、仕方なしに割れた石と死んだ金魚を見せて、全ての事を話しました。
 するとアチャさんは、ポロポロと涙をこぼしながら言いました。
「あの石は、魚石です。
 丁寧に磨くと、中の金魚が泳いでいるのが見えます。
 わたしの国ではこれを見ると、とても長生きできると言われています。
 でも金魚が死んでしまっては、一両の価値もありません」
「何と! それは、もうけそこなった」
 話を聞いた主人も、くやし涙をポロポロとこぼしました。

おしまい

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