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どうもと、こうも

どうもと、こうも
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 むかし江戸の町に、『どうも』」という医者と、『こうも』という医者が住んでいました。
 二人とも腕が良く、日本一の医者と言われていました。
 ところが、日本一が二人もいるのは変です。
 そこで二人はいつも、
「わしが、日本一の医者じゃ」
「いいや、わしが、日本一の医者よ」
と、けんかをしていました。

 ある日の事、どちらが本当の日本一か、二人は腕比べをすることにしました。
 まず、どうもが言いました。
「切った腕を、すぐにつなぐ事が出来るか?」
「そんな事は、たやすい事よ」
「それなら、やってみろ」
 どうもが自分の腕を、刀で切り落としました。
 するとこうもが、たちまちどうもの腕をつなぎました。
 つないだ腕は元通りで、つないだあとが全くわかりません。
「次は、お前の番だ」
 今度は、こうもが自分の腕を刀で切り落としました。
 するとどうもが、すぐに腕をつなぎました。
 これもつないだあとがわからないくらい、上手につないであります。
 どっちも見事な腕前で、これではどちらが日本一かわかりません。
 すると、こうもが言いました。
「腕をつないだくらいでは、腕比べにならん。次は首のつなぎ比べでどうじゃ?」
「よかろう。たやすい事よ」
 すると、こうもがどうもの首を切って、どうもを殺してしまいました。
 まわりで見物していた人々は、ビックリです。
 でも、こうもは、
「みんな、おどろく事はない」
と、たちまちどうもの首をつないで生き返らせました。
「おおっ、これは見事!」
 みんなは、手をたたいて感心しました。
「今度は、わしの番じゃ」
 次は、どうもがこうもの首を切りました。
 そしてどうもも、たちまちこうもの首を元通りにつないで生き返らせました。
 どちらも見事な腕前で、なかなか勝負がつきません。
「うーん。代わりばんこでは、勝負にならん。今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ? そしてはやく首をつないだ方が、勝ちじゃ」
 どうもが言うと、こうもも賛成しました。
「それは、おもしろい。では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
 二人は一緒に、相手の首を切りました。
 ところが両方一緒に首を切ってしまったので、首をつないで生き返らせてくれる人がいません。
 どうする事も出来ず、二人は死んでしまいました。

 それからです。
『どうもこうもできない』
と、いう言葉が出来たのは。

おしまい

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