福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話 
         
          
         
乳しぼりの女 
      
      
        ある農家の娘が楽しい事を空想しながら、牛からしぼったばかりのミルクの入った桶(おけ)を頭に乗せて運んでいました。 
「このミルクを売ったお金で、少なくとも300個の卵が買えるわ。 
 そして、どんなに悪くても、卵からは200羽のヒナが生まれるわ。 
 そして、そのうちの50羽は、親鳥に成長するわ。 
 そう、ちょうどその頃はクリスマス前で、トリ肉が一番高く売れる時期だわ。 
 高く売れると、そのお金で新しいドレスが買えるわね。 
 真っ赤なドレス、とっても素敵な真っ赤なドレスよ。 
 当然、クツもおそろいでね。 
 そしてそのドレスを着て、クリスマスパーティーに出かけるのよ。 
 素敵なドレスを着た美人のあたしが登場すれば、若い殿方はみんな、あたしにプロポーズしてくるわ。 
 でも、すぐに受けてはダメ。 
 こういうのは、じらすのがコツよ。  
 あたしは、つれなく頭をツンともたげて、ていねいに、みんなの申し出を断るのよ。 
 でも、みんなはあきらめず、あたしの周りから離れない。 
 そこであたしは、・・・あっ!」 
 娘が夢中になって頭をゆらしたとたん、ミルクの入った桶は地面に落ちてしまいました。 
 そして、彼女の壮大な計画は、終わってしまいました。 
       これを日本語で、「捕らぬ狸の皮算用」と言います。 
           
        ※「取らぬ狸の皮算用」 
        → (まだ捕えないうちから、狸の皮の売買を考えることから) 不確実な事柄に期待をかけて、それをもとにした計画をあれこれ考えること。 
   
        広辞苑 第五版より  
      おしまい 
          
         
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