福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話 
       
        
       
盗みをする子どもと母親 
      
      
        ある子どもが、学校で友だちの本を盗んで来て母親に見せました。 
 すると母親は、叱りもせずに、 
「良かったね」 
と、褒めました。 
 次の日、子どもは誰かの服を盗んで来て、母親に見せました。 
 母親は前よりも、もっと褒めました。 
 こうして、この子どもは大きくなるにつれて、ますます大きな盗みをするようになりました。 
 けれども、とうとうある日、盗みをしている所を見つかって警察に捕まりました。 
 そして両手を背中で縛り上げられて、首切り役人の所に引き立てられて行きました。 
 母親は胸を掻きむしって悲しみながら、息子に付き添って行きました。 
 途中で、息子が、 
「お母さん、ちょっと。内緒の話しがあるから、耳を貸して下さい」 
と、言いました。 
 母親が息子の口に耳を近づけた途端、息子は耳たぶをくわえて、ガブリと噛み切ってしまいました。 
「この親不孝者! 泥棒ばかりして、さんざん心配させた上に、お母さんの耳を食いちぎるとは何事ですか!」 
 母親が叱りつけると、息子が言いました。 
「始めて本を盗んだ時に、お母さんはぼくを褒めてくれた。あの時ぼくを叱っていたら、こんな事にならずにすんだのに」 
 
 このお話しは、悪い事は始めうちに懲らしめないと、そのうちだんだんひどくなって、手におえなくなる事を教えています。 
      おしまい 
          
         
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