福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話 
         
          
       
旅人とクマ 
      
      
        むかしむかし、ひげの生えている男と帽子(ぼうし)をかぶった男が、二人で旅をしていました。 
 ひげの生えている男の方が、帽子をかぶっている男に、 
「おれたちは、友だちどうしだよね」 
と、いったとき、 
「ガォーー!!」 
と、とつぜん大きなクマが出てきました。 
 ひげの男は帽子の男の背中に足をかけると、ヒョイと近くの木に飛び移って、スルスルと高い枝にのぼりました。 
 帽子の男はどこへ逃げたらいいのか分からなくて、道にばったりとたおれました。 
 死んだふりをすればクマにおそわれない、と言う話を聞いたことがあったからです。 
 クマは、くんくん、くんくんと、帽子の男のにおいをかいでいましたが、そのうちどこかへいってしまいました。 
 それを見て、ひげの男が木からおりてきてたずねました。 
「ねえきみ、いま、クマがきみに何かいっていたようだけど、なんて言ったんだい?」 
 帽子の男は、こう答えました。 
「クマはこう言ったんだ。あぶないことに出会ったとき、自分だけさっさと逃げてしまうような友だちとは、もういっしょに旅をしない方がいいよって」 
 それを聞いたひげの男は、とてもはずかしそうな顔をしました。 
 
 本当の友だちとは、苦しいときや危険なときに助けてくれる人だと、このお話しはおしえています。 
      おしまい 
          
         
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