福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話 
         
          
       
ロバのかげ 
      
      
        ある人が、遠くの町へ行くために、ロバとロバ引きをやといました。 
 その日は太陽がカンカンで、とても暑い日でした。 
 旅人は、一休みしようとロバを止め、日差しから逃れるために、ロバのからだのかげへと、もぐりこみました。 
 しかしあいにく、ロバのかげは、一人分のスペースしかありません。 
 すると、馬方がいいました。 
「あんたに貸したのはロバだけで、ロバのかげは、あんたにかしてない。かげはわたしの物だ」 
 すると旅人も。 
「そんなことはない。ロバをかりたと一緒に、ロバのかげもかりたのだ」 
「いや、かしてない!」 
「いや、かりた!」  
 口げんかは、そのうちに、なぐりあいのけんかになりました。 
 
  するとロバは、  
「やれやれ、今のうちに逃げよう」 
と、けんかのすきに、どこかへ逃げて行ってしまいました。 
       ささいなことであらそっているうちに、大切な物を失うことは、よくあることです。 
      おしまい 
          
         
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