きょうの江戸小話
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7月21日の小話

うなぎのかぎ賃
イラスト myi

うなぎのかぎ賃

 むかし、ある町に、けちんぼうな男がいました。
 男は毎日毎日ご飯どきになると、うなぎ屋の前へ出かけて行っては腹いっぱいにうなぎのにおいを吸い込み、

うなぎのかぎ賃

 そのまま家へ飛んで帰ってうなぎのにおいでご飯を食べるのです。

 さて、それに気づいたうなぎ屋の親父は、
「においだけで飯を食うとは、なんちゅうけちだ。
 よし、あのような奴からは、においのかぎ賃を取ってやろう」

うなぎのかぎ賃

と、さっそく帳面(ちょうめん)につけておき、月末になると男の家ににおいのかぎ賃を取りに行きました。
 すると、けちんぼうな男は。

うなぎのかぎ賃

「やい、おれはうなぎ屋に、借金をした覚えはないぞ!」
「いえいえ、これは、うなぎのかば焼のかぎ賃でございます。
 えーと、しめて八百文(→二万四千円ほど)ですな。
 においをかいでうなぎを食べたつもりになっておりますので、こちらも食わせたつもりで銭を取りに来ました」
 うなぎ屋がすましていうと、男は仕方なくふところから八百文取り出しました。
「へい、確かに八百文。ありがとうございました」
 うなぎ屋がにこにこ顔でお金を受け取ろうとすると、男はそれを板の間へ放り投げました。

うなぎのかぎ賃

 チャリーン。
 チャリーン。
 お金が景気の良い音をたてると、男はうなぎ屋に言いました。
「においの代金は、音で払おう。
 今、銭の音を聞いただろう。
 本当に銭を受け取ったつもりで、帰んな!」

 この勝負、うなぎ屋の負けでございます。

おしまい

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