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        世界のとんち話 第19話 
         
          
         
ものしりフクロウ 
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報 
       むかしむかし、あるところに、ブラーチョクという人がすんでいました。 
   えらい人でもなく、お金持ちでもない、ただのおひゃくしょうでしたが、とてもかしこい人でした。 
   ある日、ブラーチョクは町へいきました。 
   そして息子のみやげに、目玉のギョロギョロしているフクロウを買いました。 
  「さあ、日のくれぬうちに村へかえろう」 
   ブラーチョクは、フクロウを肩にとまらせてかえりをいそぎました。 
   けれども、まだ半分もこないうちに日がくれてしまいました。 
  「しかたがない。今夜はつかれているし、どこかヘとめてもらおう」 
   そう思って、あたりを見まわすと、むこうにあかりのついた家があります。 
   ブラーチョクは、さっそくそばへいって、まどからのぞいてみました。 
   まっ白なテーブルかけをかけたテーブルに、フカフカのおまんじゅうと、ガチョウのまる焼きと、ハチミツ酒のビンがならんでいます。 
   そのそばに若い女の人がすわって、ぬいものをしています。 
  「しめた。すてきな夕めしにありつけるぞ」 
   ブラーチョクはうれしくなって、まどをトントンと、たたきました。 
  「どなた? メーテック、おまえさんなの?」 
  「こんばんは。とおりがかりの者です。ちょっと火にあたらせてくれませんか?」 
   おかみさんはあわてて、へやじゅうをかけまわりました。 
   たちまち、テーブルの上のおまんじゅうは、ねり粉のおけにとびこみ、ハチミツ酒のビンは、箱の中、ガチョウのまる焼きは、だんろの中にかくれました。 
  「やれやれ。なんてことだ」 
   ブラーチョクがガッカリして、まどからはなれようとしたとき、一台のウマそりがはしってきて、その家の前にとまりました。 
   中から毛皮のコートを着た人がおりてきて、大声でどなりました。 
  「おれだ。かえったよ!」 
   主人は家へはいろうとして、ブラーチョクに気がつきました。 
  「どなたですかね?」 
  「とおりがかりの者ですが、日がくれてこまっています、ひと晩とめていただけませんか?」 
   ブラーチョクは、たのみました。 
  「さあさあ、どうぞ。いつだってお客は大かんげいですよ」 
   主人はブラーチョクをつれてうちへはいると、おかみさんにいいつけました。 
  「お客さんだ。ごちそうしてくれ」 
  「ごちそうですって? うちには、パンとお塩しかないんですよ」 
  「それはしかたがない。パンと塩だって、りっぱな食べ物だ。それでいいからだしておくれ」 
   主人はフクロウに気がついて、ききました。 
  「その、ばけものみたいな鳥は、いったいなんだね?」 
  「これですか。もの知りフクロウといって、りこうな鳥でね。どんなことでも知っていて、うそは大ぎらいってやつですよ」 
   ブラーチョクはそう答えると、こっそりフクロウの目玉をつつきました。 
   フクロウはビックリして、ヘんな声をだしました。 
  「おや? フクロウが、なにかいいましたな?」 
   主人がききました。 
  「はい。それが、ねり粉のおけに、まんじゅうがはいってるなんていうんですよ」 
  「まんじゅうが? おいおい。おけをしらべてごらん」 
   けちんぼうのおかみさんは、ギロリと、フクロウをにらみましたが、しかたなくおけを見にいきました。 
   そして、さもビックリしたような顔をして、おまんじゅうを出してきました。 
   主人とお客は大喜びで、おまんじゅうをたべました。 
   ブラーチョクは、また、もの知りフクロウをつつきました。 
  「こんどは、なんていってますね?」 
   主人は聞くと、ブラーチョクはあたまをかしげながらいいました。 
  「それが、・・・きっと、でたらめでしょうがね。箱の中に、ハチミツ酒のビンがあるなんていうんですよ」 
  「いや、ひょっとすると、ほんとうかもしれん」 
   主人はうれしそうに手をこすりながら、さけびました。 
  「おい、ためしにのぞいてごらん」 
  「またそんなことを! あるはずがないでしょう」 
   おかみさんは、ますますこわい顔で、フクロウをにらみました。 
   それでもテーブルの上には、ハチミツ酒のビンが出てきました。 
   主人とお客はさっそくお酒をのみながら、おまんじゅうをたべました。 
  「だまってろ。このおしゃべりめ!」 
   プラーチョクは、また自分でフクロウをつついておいて、フクロウが声をたてると、しかりつけました。 
  「すこしは静かにしないか。そんなことは、おまえの知ったことか」 
   すると、主人がブラーチョクをとめました。 
  「いやいや、お客さん。そんなにしかったりしないで、あんたのフクロウのしゃべったことをおしえてくれませんか。いったい、こんどはなんていいましたね?」 
  「まったく、おはずかしい、このおしゃべり鳥めが!」 
   ブラーチョクは、もう弱りきったというようにいいました。 
  「じつは暖炉の中に、ガチョウの丸焼きがあるなんて、・・・まったく、しょうのないやつですよ」 
  「ガチョウのまる焼きですと! ほほう、そりゃすごい。おまえ聞いたかい? ガチョウだ。それもまる焼きだ! さあ、もってきてくれ。ついでに、まだなにかないかよく見てこい」 
   おかみさんは、だまって暖炉をのぞきにいきました。 
   そして、ビックリしたように手をたたきました。 
  「まあ、あったわ。ほんとうにどうしたんでしょう。きゅうにガチョウのまる焼きが出てくるなんて。ふしぎねえ、わけがわからないわ」 
   ガチョウのまる焼きが出てくると、主人はブラーチョクに、 
  「どうです。なんでも知っていて、うその大きらいな鳥のために、もの知りフクロウのために、かんぱいしませんか?」 
  と、いいました。 
   こうして、もの知りフクロウのおかげで、ブラーチョクはごちそうにありつくことができました。 
   そして、あくる日も、きのうのごちそうののこりもので、たっぷり腹ごしらえをして家を出ました。 
   ブラーチョクを見送りながら、主人はおかしそうに、おかみさんにいいました。 
  「アハハハハハ。みごとにやられたなあ。あの男はたいしたやつだ。けちんぼうなおまえを、やっつけたんだからな」 
   主人は、すべてを知っていたのかもしれませんね。 
      おしまい 
         
         
        
       
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