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        世界のとんち話 第18話 
         
          
         
ウシを手に入れるまで 
インドネシアの昔話 → インドネシアの国情報 
       むかしむかし、セレベス島のある村に、ラ・ダナという若者がすんでいました。 
   ある時、おそうしきがありました。 
   この村では、おそうしきにきた人には、ウシの肉がくばられるならわしでした。 
   頭をもらう人、かた方の足をもらう人、どう体をもらう人と、それぞれもらうところがちがいました。 
   そこで、ラ・ダナは、ほかのところをもらうなかまにそうだんをもちかけ、いっしょに生きたウシで一頭もらうことにしました。 
  「このウシをかって、もっと太らせよう」 
   ラ・ダナが言うと、なかまもさんせいしました。 
   そして、ラ・ダナが、ウシをかうことになりました。 
   ところが四、五日たつと、ラ・ダナがなかまのところへきて言いました。 
  「ぼくはウシの肉が食べたくなった。ウシをころそう」 
  「せっかくだから、もっと太らせてからにしようよ」 
  「いや、やっぱり自分の足をもらうことにするよ。きみたちは、かってにウシをかいな」 
   ラ・ダナは、ウシのかた足を切ろうとしました。 
  「ま、まってくれ! それじゃウシが死んじゃう」 
  「そんなことはしらないさ。ぼくは、ぼくの分のかた足だけもらえばいいのさ」 
  「じゃ、きみにもう一本の後ろ足をやるから、今ころすのはやめよう」 
  「うーん、そんなに言うなら、もっと太らせてからにしようか」 
   ラ・ダナは、自分のとり分が足二本になったのでよろこびました。 
   ところが一週間たつと、ラ・ダナがやってきて言いました。 
  「やっぱり肉が食べたいから、ウシをころそう」 
  「しかたがない。前足をもう一本やるから、もっと太らせよう」 
  「いやだ。がまんできない」 
  「前足を二本ともやろう。どうだい?」 
  「それならいいよ」 
   ラ・ダナは、とり分が足四本になったので、よろこんで帰りました。 
   ところが一ヶ月たつと、またやってきました。 
  「そろそろウシをころそう。長いこと肉を食べていないから、もうがまんできない!」 
  「しかたがない。胴体もやるから、もう少しがまんしろよ」 
  「よし、それならもっと太らせよう」 
   ラ・ダナは、頭だけ残して、ぜんぶもらうことになったので大喜びです。 
   ところが一ヶ月たつと、またまたやってきて言いました。 
  「年とったお母さんが、ウシの肉を食べたいと言うんだ。今度こそウシをころそう」 
   その時、なかまはみんないそがしいしごとで、気がイライラしていました。 
  「なんてうるさいやつだ。ウシはみんなきみにやるから、かってにしろ!」 
   とうとう、ラ・ダナは、ウシを一頭、まるごと手に入れました。 
   そのあと、ラ・ダナはウシを殺すどころか、そのままかって、まるまると太らせたのです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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