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        世界のわらい話 第19話 
         
          
         
カメのこうらはヒビだらけ 
ブラジルの昔話 → ブラジルの国情報 
       むかしむかし、あるところに、一ぴきのカメがいました。 
   このカメは、たいへん知りたがりやでした。 
   ある晩のことです。 
   カメは砂浜にでて、きれいな星空をながめていました。 
  「ああ、なんてきれいな空だろう。なんてすてきな星だろう。あの星のそばは、どんなふうなんだろうなあ」 
   空を見あげているうちに、カメは星のそばへいってみたくなりました。 
   カメはノッソリノッソリと、空をめざして歩きはじめました。 
   歩いているうちに、夜があけました。 
   なお歩きつづけているうちに、日がくれて、また夜がきました。 
   カメが空を見あげてみると、星はあいかわらず空高くかがやいています。 
   カメはガッカリしましたが、でもまた元気をだして、ノロノロと歩きはじめました。 
   でも、歩いても歩いても、星は近くなりません。 
   カメはつかれきって、もう、ひと足も前ヘ進めなくなりました。 
  「もうだめだ。星のそばへなんか、とうていいけないんだ」 
   カメがかなしんでいると、灰色のアオサギがそばを通りかかりました。 
  「こんにちは、カメさん。こんなところでなにをしているのですか?」 
  「はい。星のそばヘいってみたいんだけど、歩いても歩いてもいけないんだよ。アオサギさん。わたしを空へつれていってくれないかい?」 
  「いいですとも。おやすいご用です。さあ、わたしの背中におのりなさい」 
   カメは大喜びで、アオサギの背中によじのぼりました。 
   アオサギは、つばさをひろげてまいあがりました。 
   アオサギは、グングン空高くのぼっていきます。 
   しばらくして、アオサギはカメに聞きました。 
  「カメさん、カメさん。地面が見えますか?」 
  「見えるよ。ずいぶん小さくはなったけどね」 
  と、カメはこたえました。 
   アオサギは、いっそう高くのぼっていきました。 
   しばらくいくと、またカメに聞きました。 
  「カメさん、地面はまだ見えますか?」 
  「いや、アオサギさん。もう見えなくなってしまったよ」 
   するととつぜん、アオサギは大声をあげて笑いだしました。 
  「えっへへへ。バカなカメさん、バイバーイ」 
   そしていきなり、高い高い空の上で、クルリと、ちゅうがえりをしたのです。 
   じつはアオサギは、わるい魔法使いだったのです。 
   カメはアオサギの背中から、あっというまにほうりだされて、まっさかさまに落ちていきました。 
   かわいそうなカメは、目をしっかりとじて、いっしょうけんめい神さまにおいのりしました。 
  (神さま、神さま、神さま。もしも、たすけてくださったら、もう二度と、空ヘいきたいなどともうしません) 
   地面の近くまできたとき、カメは目をあけてみました。 
   すぐ近くに、森や山が見えます。 
  「あぶない! みんなよけてくれ! どいてくれ!」 
   カメは、むちゅうでさけびました。 
  「ぼくにぶつかったら、みんなつぶれてしまうぞ!」 
   森の木も、山の岩も、いそいでわきヘよけました。 
   ドシーン! 
   カメは地面に、ものすごいいきおいでぶつかりました。 
   でもカメは、死にませんでした。 
   けれども、カメのこうらは、コナゴナにくだけちってしまいました。 
   それを、一人のよい魔法使いが見ていました。 
   魔法使いはカメをかわいそうに思い、こうらのかけらをあつめてつないでやりました。 
   このときからカメのこうらは、ひびだらけになってしまったのです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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