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        日本の有名な話 第5話 
         
          
         
カチカチ山 
カチカチ山のぬりえ 
       むかしむかし、おじいさんの家の裏山に、一匹のタヌキが住んでいました。 
   タヌキは悪いタヌキで、おじいさんが畑で働いていますと、 
  「やーい、ヨボヨボじじい。ヨボヨボじじい」 
   と、悪口を言って、夜になるとおじいさんの畑からイモをぬすんでいくのです。 
   おじいさんはタヌキのいたずらにがまんできなくなり、畑にワナをしかけてタヌキをつかまえました。 
   そしてタヌキを家の天井につるすと、 
  「ばあさんや、こいつは性悪ダヌキだから、決してなわをほどいてはいけないよ」 
  と、言って、 そのまま畑仕事に出かけたのです。 
   おじいさんがいなくなると、タヌキは人のよいおばあさんに言いました。 
  「おばあさん、わたしは反省しています。もう悪い事はしません。つぐないに、おばあさんの肩をもんであげましょう」 
  「そんな事を言って、逃げるつもりなんだろう?」 
  「いえいえ。では、タヌキ秘伝(ひでん)の、まんじゅうを作ってあげましょう」 
  「秘伝のまんじゅう?」 
  「はい。とってもおいしいですし、一口食べれば十年は長生きできるのです。きっと、おじいさんが喜びますよ。もちろん、作りおわったら、また天井につるしてもかまいません」 
  「そうかい。おじいさんが長生きできるのかい」 
   おばあさんはタヌキに言われるまま、しばっていたなわをほどいてしまいました。 
   そのとたん、タヌキはおばあさんにおそいかかって、そばにあった棒(ぼう)でおばあさんを殴り殺したのです。 
  「ははーん。バカなババアめ、タヌキを信じるなんて」 
   タヌキはそう言って、裏山に逃げていきました。 
   しばらくして帰ってきたおじいさんは、倒れているおばあさんを見てビックリ。 
  「ばあさん! ばあさん! ・・・ああっ、なんて事だ」  
    おじいさんがオイオイと泣いていますと、心やさしいウサギがやってきました。 
  「おじいさん、どうしたのです?」 
  「タヌキが、タヌキのやつが、ばあさんをこんなにして、逃げてしまったんだ」 
  「ああ、あの悪いタヌキですね。おじいさん、わたしがおばあさんのかたきをとってあげます」 
   ウサギはタヌキをやっつける方法を考えると、タヌキをしばかりに誘いました。 
  「タヌキくん。山へしばかりに行かないかい?」 
  「それはいいな。よし、行こう」 
   さて、そのしばかりの帰り道、ウサギは火打ち石で『カチカチ』と、タヌキの背負っているしばに火を付けました。 
  「おや? ウサギさん、今の『カチカチ』と言う音はなんだい?」 
  「ああ、この山はカチカチ山さ。だからカチカチというのさ」 
  「ふーん」 
   しばらくすると、タヌキの背負っているしばが、『ボウボウ』と燃え始めました。 
  「おや? ウサギさん、この『ボウボウ』と言う音はなんだい?」 
  「ああ、この山はボウボウ山さ、だからボウボウというのさ」 
  「ふーん」 
   そのうちに、タヌキの背負ったしばは、大きく燃えだしました。 
  「なんだか、あついな。・・・あつい、あつい、助けてくれー!」 
   タヌキは背中に、大やけどをおいました。 
   次の日、ウサギはとうがらしをねって作った塗り薬をもって、タヌキの所へ行きました。 
  「タヌキくん、やけどの薬を持ってきたよ」 
  「薬とはありがたい。まったく、カチカチ山はひどい山だな。さあウサギさん、背中が痛くてたまらないんだ。はやくぬっておくれ」 
  「いいよ。背中をだしてくれ」 
   ウサギはタヌキの背中のやけどに、とうがらしの塗り薬をぬりました。 
  「うわーっ! いたい、いたい! この薬はとってもいたいよー!」 
  「がまんしなよ。よく効く薬は、痛いもんだ」 
   そう言ってウサギは、もっとぬりつけました。 
  「うぎゃーーーーっ!」 
   タヌキは痛さのあまり、気絶してしまいました。 
   さて、数日するとタヌキの背中が治ったので、ウサギはタヌキを釣りに誘いました。 
  「タヌキくん。舟をつくったから、海へ釣りに行こう」 
  「それはいいな。よし、行こう」 
   海に行きますと、二せきの舟がありました。 
  「タヌキくん、きみは茶色いから、こっちの舟だよ」 
   そう言ってウサギは、木でつくった舟に乗りました。 
   そしてタヌキは、泥でつくった茶色い舟に乗りました。 
   二せきの船は、どんどんと沖へ行きました。 
  「タヌキくん、どうだい? その舟の乗り心地は?」 
  「うん、いいよ。ウサギさん、舟をつくってくれてありがとう。・・・あれ、なんだか水がしみこんできたぞ」 
   泥で出来た舟が、だんだん水に溶けてきたのです。 
        
      「うわーっ、助けてくれ! 船が溶けていくよー!」 
   大あわてのタヌキに、ウサギが言いました。 
  「ざまあみろ、おばあさんを殺したバツだ」 
   やがてタヌキの泥舟は全部溶けてしまい、タヌキはそのまま海の底に沈んでしまいました。 
      おしまい 
         
         
        
       
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