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2月21日の世界の昔話
  
  
  
  ウサギどん キツネどん
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 むかしむかし、原っぱの中を、ウサギがヒョイヒョイとあるいてきました。
 むこうをみると、おいしそうなやさいがたくさんおちています。
  (こいつはしめた。)
  と、くいしんぼうのウサギはパッととびつきました。
 ところが、それは人間のしかけたわなで、ウサギはたちまちつかまってしまいました。
 逃げようにも、からだになわがまきついてしまい、うごくこともできません。
 そこへ、わなをしかけた人間がやってきました。
  「やいウサギ! おまえだな、まえからうちの畑のやさいをとってたべたりしていたのは。まずはおまえをパンパンにぶってやろう」
 そういって人間は、ウサギをぶつための木のえだをとりに林へはいっていきました。
 ちょうどそこへ、キツネがやってきました。
 わなにはまってうごけないウサギを見ると、キツネは、
  「ほう、ウサギどん、きょうはまいってるようだね」
  と、いいました。
 キツネとウサギはなかがわるくて、けんかばかりしていたのです。
 キツネがからかうと、ウサギはしばられているのにへいきなかおをして、
  「キツネどん、わしがこんなわななんかに、ひっかかるとおもうかね。これはわざとだ。わしがたのんで人間にしばってもらったのだよ」
  「えっ? なぜしばらせたのだい?」
  「いま、村のしりあいとばったりあってな。けっこんのおいわいがあるので、ぜひきてほしいとたのまれたんだが、その男はわしがきまぐれなのをしっていて、にげられないようにわざと木にぶらさげて、わしをはこぶかごをとりにいったのさ。わしはそのむかえのかごを、まっているわけだ」
  「ふうん、そんなおいわいなら、ごちそうもおおいだろうなあ」
  「おおいとも! おなかいっぱい、おいしいものがたべられるよ」
  「いいなあ」
 くいしんぼうのキツネは、うらやましそうなかおをしています。
  「どうだい、わしにかわって、そのおいわいに出てみたくないかい?」
  「うん! ウサギどん、たのむから、わしをいかせておくれよ」
  「よし、そんなにいうんなら、かわってあげようか」
 そこでウサギは、じぶんのからだのなわをキツネにほどかせて、そのかわりに、キツネのからだをしばってしまいました。
 そしてじぶんはさっさと、どこかへきえていきました。
 そのあとそこへ人間がもどってきて、ウサギがキツネにかわっているのでビックリ。
  「あれ、いつのまに、かわったのだい? だが、キツネもニワトリをとったりするこまりものだ。よし、きょうはおまえをこらしめてやろう!」
 人間は、林からひろってきた木のぼうで、ポカリポカリとキツネをぶちます。
 キツネはしばられているので、にげることができません。
 そのうちに、つかっていた木のぼうがおれたので、男はかわりのぼうをひろいに、また林へはいっていきました。
 そこへウサギが、もどってきました。
  「ウサギどん、ウサギどん、たすけてくれ」
  と、キツネはいっしようけんめい、ウサギにたのみます。
  「たすけてやってもいいが、これからのち、わしにしつれいなことをいわないかい? わしに出あったら、『いつでも、おげんきですか? ウサギどん』と、あいさつするかい?」
  「うん、するする! きっとあいさつするよ!」
  「よし、じゃあ、たすけてやろう」
  と、ウサギはキツネのなわをといてやりました。
  「ああ、ありがとう。おかげでたすかったよ」
   キツネはウサギにだまされてしばられたこともわすれてしまい、ただわなからぬけでることができたのをよろこんで、おれいをいっています。 そして、人間がまたぼうをひろってもどってきたときには、ウサギもキツネも、もうどこかへいってしまっていました。
おしまい